【小規模事業所も将来的に対象に】106万円の壁撤廃はいつからどうなる?
東大阪市で大阪・奈良・京都・兵庫の中小企業様およびクリニック・動物病院様向けに、人事労務関係の手続きなどのサービスを提供している女性社労士の二上です。
パートなどで働く人が厚生年金に加入しやすくなるよう、2026年10月から「年収106万円の壁」が撤廃されようとしています。社会保険に関する年収の壁は130万円と、従業員数51人以上の事業所が対象の106万円があります(現状)。
将来的には、従業員数51人未満の小規模事業所にも関わってくることになります。そのため、中小企業様やクリニック・動物病院様にとっていつから、どのような変化となるのか、把握していただければ幸いです。早めの準備をしておきましょう。
「年収106万円の壁」の撤廃とは
先述のように、この「年収106万円の壁」とは、社会保険料の負担に係るボーダーラインのことです。現在、年収106万円以上の従業員は、働く時間などによって社会保険に加入する義務が発生します。
壁撤廃の背景としては、昨今話題になっている人材不足・働き手不足を背景に、働き控えをしている人たちにもっと働いてもらう、という意図があります。最低賃金は毎年上がっている今の世の中ですから、今まで通り働いていたら106万円を超えてしまいます。そのためさらなる働き控えをしなければ、という流れになるとさらに人材不足に陥ります。
これを解消するために、政府は、パートタイマーなど短時間労働者の厚生年金加入要件の緩和に動いています。これまで政府内での調整は難航してきましたが、この2025年5月16日に年金制度改革の関連法案が閣議決定、国会に提出され、今国会で成立する見通しになってます。
「年収106万円の壁」のこれまで
これまで、51人以上の企業規模の会社などの従業員が社会保険に加入するには以下の要件を満たす必要がありました。
- 年収:106万円以上(月収88,000円以上)
- 労働時間:週20時間以上
- 雇用期間: 1年以上が見込まれる
- 条件:学生ではないこと
「年収106万円の壁」撤廃後どうなる?
今回の見直しでは、上記の条件のほとんどが撤廃され、主に「週20時間以上」を満たせば、収入に関わらず社会保険に加入することになります。
また、将来的には小規模企業様やクリニック・動物病院様など、従業員が51人未満の小規模事業所にも適応される予定があります。
想定されている時期は、
- 壁撤廃が2026年10月ですが、これはいったん従業員51人以上の企業が対象です。
- 2027年10月にはこの企業規模要件が撤廃される見込みで、小規模企業様やクリニック・動物病院様も対象に入ってきます。
- 2029年10月には個人事業所(5人以上の従業員がいる事業所)も対象となる見込みです。
これにより、新たに200万人が厚生年金に加入するだろう、と言われています。実際には、中小企業様・クリニック・動物病院様にとっては、保険料負担が増え、従業員にとっては実質的な手取りは減る中で、「週20時間以上」という条件だけは残っていますので、働き控えが継続する可能性も残っています。
中小企業様やクリニック・動物病院様などへの影響
事業者側への影響は、下記があります。
- 事業主負担の社会保険料の増加
厚生年金・健康保険は折半ですから、1人あたり月数万円のコスト増となります。この点については政府も企業に対する保険料負担を軽減するための支援を検討中です。 - また当然ながら、人件費の再計算が必要です。
- 就業調整の減少
パート従業員が「年収を106万円未満に抑えたい」という理由で勤務時間を減らすことがなくなる可能性があり、シフト調整が柔軟になりかもしれません。 - 人材確保
社会保険加入を希望する人材が働きやすくなり、中小企業様やクリニック・動物病院様にとっても優秀な人材の確保がしやすくなる可能性があります。
準備すべきこと
- コストの試算
パート・アルバイトで週20時間以上働く従業員全員を対象に、厚生年金・健康保険の事業主負担額を試算しておきましょう。 - 雇用契約と労働時間の見直し
労働契約書や就業規則の「労働時間」「社会保険加入要件」などの記載を見直しておきましょう。 - 従業員への説明
従業員の実質的な手取りは少し減ってしまうことから、従業員への説明は、メリットも強調することが大切です。さらなる働き控えがおこらないよう、将来の年金増額などメリットもしっかり伝えておきましょう。 - 社労士・税理士と相談
法改正対応に詳しい専門家と連携をとり、制度変更のスムーズな導入を目指しましょう。
このように、保険料が増えるというデメリットは政府が支援を検討している中、人材確保というメリットもありますので、前向きにとらえて、しっかり準備していただきたいと思います。
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