【年収の壁・支援強化】中小企業や動物病院・クリニック様が注意するポイントは?
本日は、106万円/130万円の年収の壁について、クリニック・動物病院様向け女性社労士の二上がご紹介します。
今年、2023年9月に厚生労働省は、パート・アルバイトなどの短時間労働者が106万円や130万円の「年収の壁」を意識せず働けるよう「年収の壁支援強化パッケージ」を公表、10月より2年間限定の支援をスタートいたしました。
公表以降、多くの中小企業の経営者様やクリニック・動物病院の院長先生より、「うちのクリニック何をしないといけないのか?」「100人以下の中小企業は関係ない?」などのご質問をいただきます。そのような経営者様、院長先生に「年収の壁」と「支援強化パッケージ」についての概要をまとめました。
「106万円の壁」「130万円の壁」とは?
社会保険料の負担が発生する年収のラインを「年収の壁」として、「106万円の壁」と「130万円の壁」と呼んでいます。なぜ、106万円と130万円の2つが存在するかというと、被保険者となるパート・アルバイト従業員が働く事業所の規模によって、社会保険の加入となる年収ラインが異なるからです。また、それぞれ加入となる社会保険も異なります。
以下の表のとおり、100人以下(2024年10月以降は50人以下)の中小企業やクリニック・動物病院様については、「130万円の壁」がパート・アルバイト従業員が、「配偶者の扶養内で働きたい」や「社会保険料の負担で収入が減るのを避けたい」といった理由で意識される「年収の壁」となります。その「年収の壁」を超えないため、突発的な残業や急な人員不足対応などを断る方も少なくありません。
※2024年10月からの「社会保険適用拡大」については、こちらの記事もご参照ください。
「年収の壁・支援パッケージ」とは?
「収入の壁」を意識することなく、パートやアルバイト従業員に働いてもらえる環境づくりを支援するため政府が2023年10月に始めた施策です。それぞれの「年収の壁」への対策の概要は以下の通りです。
「106万円の壁」への対策
社会保険加入によって負担となる保険料相当額の手当を支給や賃上げなど、従業員の手取りを減らさないための取り組みを実施する企業に対して、労働者一人当たり最大50万円の支援(助成金の支給)を受けることができます。
(助成金に関する詳しい内容は、こちら)
「130万円の壁」への対策
繁忙期に労働時間を延長したことなどにより、収入が一時的に上がり「130万円の壁」を超えたとしても、事業者が「一時的に収入が上がった」ということを証明することで、引き続き配偶者の扶養に入ることが可能となります。
出典:年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
「130万円の壁」の対応、中小企業やクリニック・動物病院が注意すべきポイント5つ
中小企業やクリニック・動物病院様が直接関連してくる、「130万円の壁」対応の証明をするにあたって注意すべきポイントを見ていきましょう。
ポイント① 「一時的な収入変動」であること
対象のアルバイト・パート従業員が認定を受けるためには、「一時的な収入変動(増加)」であることの証明が必要となります。この一時的な収入の増加の要因としては「主に時間外勤務(残業)手当や臨時的に支払われる繁忙手当等」が想定されるとし、主なケースとしては以下のようなものをあげています。
- 社内のチームメンバーやクリニックスタッフが退職したことにより、業務量が増えた
- 他のメンバー・スタッフが休職したことにより、業務量が増えた
- クリニック・動物病院の患者さんが増えたことにより、業務量が増加した
- 中小企業の受注が好調だったことにより、事業所全体の業務量が増加した
- 中小企業で、突発的な大口案件により、事業所全体の業務量が増加した
一方で、以下のような今後も引き続き収入が増えることが確実な場合は、「一時的な収入増加」とはされない、としています。
- 昇給
- 恒常的な手当が新設、など
ポイントは、「年間収入の見込みが恒常的に130万円以上となる」と解釈されるものは被扶養者として該当しなくなります。
ポイント② 「一時的な収入増加」の上限額
上限額については限定されていません。しかし、増収が「一時的な収入増加」であること(上記の通り)に踏まえて、以下のような場合は(法令・通知等に基づき)被扶養者の認定が取り消されることになります。
- 被扶養者が被保険者と同一世帯に属している場合に、被扶養者の年間収入が被保険者の年間収入を上回る場合
被扶養者が被保険者と同一世帯に属していない場合に、被扶養者の年間収入が被保険者からの援助による収入額を上回る場合
ポイント③ シフト制の場合
クリニックや動物病院様ではシフト制を取っているところが多いかと思います。また中小企業の製造部門でもシフト制はよくあります。対象のアルバイト・パート従業員がシフト制であっても、本来想定されている年間収入が130万円以内で、「一時的な収入増加」であると証明された場合は、認定の対象となります。
ポイント④ 証明の方法は?
厚生労働省による、証明書の様式があります(以下)。対象のアルバイト・パート従業員(被扶養者)の配偶者(被保険者)が勤務している会社を通じて、この証明書が提出されることになります。よって、「一時的な収入増加」となったアルバイト・パート従業員がある場合は、証明を求められることしっかり理解しておきましょう。
ポイント⑤ 認定の可否
対象のアルバイト・パート従業員が引き続き被扶養者として認定を受けられるかどうかは、配偶者が加入している健康保険組合等に確認が必要となります。もし、認定を受ける必要があるのであれば、その旨を従業員に伝えてあげましょう。
その他、雇用主の証明に関する詳細は、以下のQ&Aにて確認することができます。
事業主の証明による被扶養者認定のQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
なお、この「年収の壁・支援強化パッケージ」の施策は、「年収の壁」の当面の対応として2年間の限定措置としています。公表によると、2025年(令和7年)に新たな年金制度改正を予定しているとのことですので、今後、中小企業やクリニック・動物病院様の小規模な事業所にも従業員の社会保険に関する対応が益々求められることが想定されます。今後、新たな制度の発表など、経営者の皆様に影響がある内容に関してはお伝えしていきたいと思います。
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