【関西寺社巡り】般若寺~コスモス寺~
般若寺(奈良市般若寺町)
澄み切った秋の青空の中、久しぶりにお寺を訪れました。
コスモス寺ともいわれる般若寺は、奈良坂の古道を上がったところにあります。自宅から近いので若いころから何度も訪ねているお寺ですが、10月の終わりにまさかコスモスが満開とは思いませんでした。花の時期がどんどんずれているように感じます。以前は小さな駐車場しかありませんでしたが、今は観光バスも駐車できる広々とした駐車場があり、コスモスだけではなく、初夏の紫陽花や冬の水仙など四季を通じて花が楽しめる寺として人気を集めるようになったからでしょうか。
このお寺は素朴で小さいながらも飛鳥時代に開かれただけあり、国宝の楼門や重文の13重石宝塔など歴史を感じさせる多くの建造物がありますが、それだけではなく、「平家物語」や「太平記」の舞台になった寺でもあります。コスモスに目を奪われていると気付かずに通り過ぎてしまいそうですが、保元の乱で敗れた藤原頼長、南都焼き討ちを行った罪で処刑された平重衡、後醍醐天皇の皇子で悲劇の宮として有名な大塔宮護良親王の供養碑があり、頼りなげに風に揺れるコスモスが敗者の哀しみを伝えているような気さえしてきます。
そんな敗者への感傷は、境内に並べられたインスタ映えするたくさんのコスモスグラスキューブで忘れてしまいそうです。純粋に可憐な花を楽しむだけでもこちらを訪れる価値はあるかもしれません。お寺のすぐ裏手には住宅地にしては珍しい牧場があり、また、近い将来リゾートホテルに改築される日本最古の監獄建築である「旧奈良監獄」もあります。少し遠いですが、近鉄奈良駅からぶらぶら散策するのもこの季節はお勧めです。
【13重石宝塔とコスモス】
【石仏とガラスの器に浮かんだコスモス】