クリニックのスタッフがコロナに感染したら?医院経営における労務対応について
こんにちは。5月に新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類へ引き下げられ、一般のみなさんは感染者数を以前ほど気にしなくなりました。しかし、夏にかけて増加傾向にあったことを考えると、本格的にアフターコロナの時代へ入って初めてのお盆休みが終わり、これから秋にかけて感染者数の傾向がどうなるか気になるところです。
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クリニックのスタッフにとってのアフターコロナ
5類へ変更されたことで、クリニックや動物病院の院長先生の対応に自由度が出てきたと言っても良いと思いますが、スタッフが感染した場合、かえってどう対応したらいいのかわからない、というお悩みもあるでしょう。クリニックや動物病院に限らず、従業員が新型コロナウイルスに感染するケースが今後も増加するかもしれませんので、スタッフがコロナにかかった際の労務対応ついて見ていきたいと思います。
新型コロナウイルス感染症が5類に移行したということは、季節性インフルエンザと同じ対応になったということで、政策としてコロナ対応は「国民の皆様の主体的な選択を尊重し、個人や事業者の判断にゆだねる」となりました。
つまり、クリニックや動物病院のスタッフについても「○○日外出(出勤)してはいけない」といったような行政命令としての行動制限がなくなったということです。これは、人手不足の事業場にとっては歓迎することかもしれませんが、院長先生方においては、一般企業よりも感染についてはセンシティブに考えるべきお立場上、医療従事者の感染対応は特に悩ましいところがあるかと思います。
クリニックスタッフが新型コロナウイルスに感染した場合
クリニックや動物病院において、スタッフに高熱が続いたり、しんどくて仕事ができないといった場合は、それを我慢してまで出勤することはないと思いますので、体調がよくなるまで欠勤を認めることになるでしょう。
社会保険に加入していれば傷病手当金もありますし、本人の希望があれば年次有給休暇を取得させることもできます。
対応に悩むのは、ほとんど無症状、または軽症の場合でしょう。一般企業であれば、このような時は、テレワークや出社しても他の人と接触しない部屋などで仕事をさせることもできますが、医療現場となればそれも難しいのがクリニックや動物病院の現状です。
クリニックのスタッフによるコロナ感染、参考にすべきは?
クリニックや動物病院としても、厚労省が推奨している内容を参考にするのが良いかもしれません。厚労省は、基本的に「5日間は自宅療養」を推奨する、というのが感染症対策をとっています。
では、医療機関として、5日間で良いのか?
これについては、厚労省は下記のようなQ&Aを示し、5日後以降も周りに感染させるリスクがあることを紹介しています。特にクリニックや動物病院などの医療機関では、このような管理は必要です。
出所:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について
上記により、高齢者や免疫不全者と接触する医療機関では5日でも不十分だという意見もあります。ただし一方で注意しなければならないのは、本人が出勤したいのに「出勤禁止」としたり、「出勤されたら困る」といって出勤させない場合は、休業手当を払わなくてはならない可能性もあることです。ですので、クリニックや動物病院としては今後の欠勤判断に関わるルールの見直しが必要になってくるでしょう。
仕事中にコロナに感染したクリニックのスタッフについて
コロナ患者を診ている科であれば特に、「クリニックのスタッフがコロナに感染したのは労災にあたる可能性がある」というケースもあるかと思います。労働基準監督署が「クリニックの職務と新型コロナウイルス感染は関連性がある」と判断した場合、労災として認定されます。
現状として、医療従事者のコロナに関する労災は請求されたものがすべて認められて、支給が決定しています(下図)。
出所:新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等(累計)令和5年6月30日現在
もちろん、医療従事者であるだけでは支給対象になりません。医師・看護師・介護職の方、または感染リスクが高い労働環境やコロナに感染している人が多い環境で業務を行っている必要がありあます。仕事以外で感染したことが明らかではない場合でも、労災と認められる場合があります。詳しく見る>>>
とは言え、最終的に支給を決定するのは、管轄の労働基準監督署であることもスタッフに伝えておきましょう。
「従業員がコロナに感染。こんな時どうしたらいいんだろう?」
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