ストレスチェック義務化が全事業所へ拡大:今から準備すべきポイントとは?
本日のテーマは、従業員数が50人未満の中小企業様やクリニック・動物病院様がこれまで意識されていなかったテーマかもしれません。
従業員のストレスは、周囲はもちろん本人が気づかぬ間に進行し、心身に支障をきたす、仕事効率の低下を招く、などのケースも少なくありません。
これまで、「ストレスチェック制度」が従業員50人以上の事業所に義務付けられていました。近年、メンタルヘルスが注目される中で、労働者の心の健康を守るための法整備が進んでいます。これまでは50人未満の事業所では努力義務であった本制度が、今後全ての事業所へと拡大される見通しです。今回は、制度拡大の背景や、企業が取り組むべき準備について解説します。
目次
ストレスチェック制度とは?
2015年の改正労働安全衛生法に基づき、従業員50人以上の事業所に対してストレスチェックが義務化されました。これは、従業員のストレスレベルを把握し、メンタルヘルス不調の予防や早期発見につなげることが目的です。
対象者は正社員だけではなく、一般定期健康診断の対象であるパートやアルバイトも含みます。契約期間が1年以上(見込みも含みます)で、週30時間程度(通常の従業員の1週間の所定労働時間数の4分の3以上)の労働をしているパート・アルバイトは、ストレスチェックの対象となります。ストレスチェックを行うことでこれらの従業員の不調を未然に防ぎ、早期に対応できることにより、職場から離脱する従業員に対しては職場復帰支援が可能になります。
また、職場でストレスチェックを行う産業医・看護師・心理士に対しては外部によるチェックも仕組みが設けられています。
中小企業や医療福祉業におけるストレスチェック実施状況
令和4年に厚労省が行った「ストレスチェック制度」の実施状況アンケートでは、義務を課されていない50人未満の事業所(中小企業)でも、業種によっては高い実施状況となっています。一方で医療福祉業界はまだ2割程度と、低くとどまっています。
- 金融保険業:9%
- 電気・ガス・水道業:3%
- 卸売業・小売業:2%
- 情報通信業:7%
- 医療福祉業:8%
- 製造業:8%
医療福祉業界が、決して他の業界と比べてストレス度が低い業界というわけではないため、今後の意識の高まりが求められます。
ストレスチェック制度拡大へ
厚生労働省のデータでは、メンタルヘルス不調により長期休職や離職に至るケースが増加傾向にあります。そのため、小規模事業所でのメンタルヘルスサポートも不可欠であるとの認識が広まり、制度の全事業所への拡大が検討されています。
これまで50人以上の事業所が対象であった「義務化の対象」を「全事業所」に拡大して対策を強化する方針です。2025年の通常国会で労働安全衛生法改正案の提出を目指しています。
ストレスチェックを実施する
厚生労働省は、「5分でできる職場のストレスセルフチェック」を無料で提供しています。こちらへアクセスしていただき、従業員ご本人が質問に答えるだけ結果が表示されます。
https://kokoro.mhlw.go.jp/check/index.html
<結果例>
また、「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ではストレスチェックの受検、ストレスチェックの結果出力のみならず、集団分析等が出来るプログラムを無料配布しています。
中小企業様やクリニック・動物病院様が取り組むべき3点
チェックだけであれば、上記の無料セルフチェックがありますが、組織として導入するためには、どのような準備をしていけば良いのでしょうか?ポイントは3点です
- 職場でストレスチェックの実施体制を整える
まずは導入を決定し、目的を再確認することが重要です。その上で、実施体制や流れを構築します。実際に実施するのは、中小企業やクリニック・動物病院の経営者ではありません。産業医などの医師や保健師が実施することが多いですが、外部へ委託することも珍しくありません。経営者ができることは、目的を発信する、積極的に回収できるよう呼びかける、といったことです。
職場でストレスや不安を感じている従業員にとっても、職場の関係者に知られることがなく、率直に答え、また必要であれば医師やカウンセラーに相談できる体制を構築することが鍵となります。
また実施体制は、組織内だけでは完結せず、社会保険労務士(社労士)や公認心理師など門的な知識を持つ担当者の配置や、産業医や外部のメンタルヘルス専門機関との連携が重要です。
厚生労働省によるYoutube動画で、「職場のメンタルヘルス対策のための体制づくり」について解説もしていますので、是非ご活用ください。
出典:こころの耳
- 従業員のプライバシー保護
ストレスチェックは従業員のプライベートな情報を扱います。そのため、プライバシーの保護が求められます。結果の管理やフィードバックの方法を適切に設定しましょう。
- メンタルヘルス不調者に対するの対応策を準備
高ストレス者が検出された場合のフォローアップ体制を整えることが重要です。メンタルヘルスケアや相談窓口の設置、定期的なフォローアップを行いましょう。
またストレスチェックの結果を分析し、働きやすい環境づくりに取り組むことも重要です。業務内容や人間関係、労働時間の見直しなども、メンタルヘルスの改善に寄与します。
ここまで、ストレスチェック制度を通じて、メンタルヘルス対策強化についてみてきました。ストレスチェックが義務化されるから実施する、ということだけでなく、職場環境の改善や生産効率の向上にもつながり、結果的には離職の防止や経営効率改善にもつながる内容ですので、2025年以降を待たずして働く人々の健康と企業の発展につなげていただければと思います。
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