2025-03-03

変形労働時間制について分かりやすく解説します

本日は、「変形労働時間制」について、分かりやすく解説してみます。

 

1か月単位、1年単位の変形労働時間制についてはクリニック・動物病院様はほとんど採用され、また顧客対応や工場作業などのある中小企業様も多くが採用されているかと思います。これからクリニックや動物病院を開業される院長先生や、不規則ワークを採用予定の中小企業様にお読みいただければと思います。

 

 

変形労働時間制とは

 

変形労働時間制は、一週間・一ヶ月・一年の期間で労働時間を計画的に配分する制度です。労働基準法では労働時間は1日8時間、1週40時間(または44時間)が法定労働時間で、その時間を超えてしまうと割増賃金を支払わなくてはなりません。しかし、業種によっては1か月のうち前半は忙しく後半は暇、また1年のうち夏は忙しいが冬は閑散期ということもあります。また、クリニックや動物病院では午前診療のみという曜日があるのが一般的です。そういった事業所では、変形労働時間制を採用することで、無駄な賃金の支払いを抑えることができ、また実情に合った労働時間や労働日で働いてもらうことができます。

 

では、週・月・年を単位とする場合について、それぞれ見ていきましょう。

 

 

変形労働時間制のタイプ

 

  1. 一週間単位の変形労働時間制

 

一週間の労働時間を合算し、40時間を超えない範囲で、一日の労働時間を配分できます。

「例:月曜から水曜の勤務時間は長めに、木曜から土曜は短めに」

 

一週間単位の変形労働時間制は、対象事業者が限られています。小売業、旅館・料理店・飲食店で、常時30人未満の労働者を使用する事業者であることが要件です。つまり、少ない人数であり、1日毎の業務に繁閑が大きく生じる事業に限っているのです。1日の所定労働時間の上限は10時間とされています。

 

  1. 一ヶ月単位の変形労働時間制

 

一ヶ月の労働時間の合計が、週平均で見て40時間を超えないように勤務時間を配分します。

 

「1~2週目は1日の労働時間を7時間に、3~4週目は9時間にしたい」場合、3~4週目が1日8時間を超えるため、変形労働時間制を採用していない限りは、所定労働時間としては働かせられません。また、「月曜日は10時間勤務のシフトを組みたいが、木曜日は4時間のシフトでいい」という事業所もあるでしょう。変形労働時間制を採用していれば、週平均で40時間に抑えていれば1か月の中で調整が可能です。

 

 
  1. 一年単位の変形労働時間制

 

顧客対応や作業に季節性がある場合に使えるのが一年単位の変形労働時間制です。

 

季節により繁忙期と閑散期のあるホテルなどの観光業や、幼稚園など長期休暇のある業種、生産が夏から秋にかけて集中する製造業など、1年間を通して、週平均の労働時間が40時間を超えない範囲で日々の労働時間を変えることができます。1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、繁忙期は労働者にとってきつい勤務になることがあるため、1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間など制限がありますので、導入するには注意が必要です。

 

詳細リーフレット>>>

 

 

変形労働時間制のメリットと注意点

 

上記の例を見て分かる通り、メリットは、中小企業様やクリニック・動物病院様の繁閑や業務量にあわせて柔軟に労働時間を調整できることにあります。これにより、年間を通してみた時には、無駄な残業などが効率化できます。また従業員にとっても、メリハリのある働き方ができるという利点もあります。

 

一方で、導入するには注意を要する点もいくつかあります。

  •  法律どおりの手順にのっとり導入しなければなりません

  中には協定も就業規則もなしで採用しているケースも見られます

  •  労働契約:変形労働時間制を採用する場合、労働契約にその内容を記載することが必要です。
  • 勤怠管理:勤怠管理やスケジュール調整が複雑になるため、適切な管理が必要となります。また、決められた所定労働時間を超えるときは残業代が発生する場合があるので注意しなければなりません
  • 適切な労働時間の設定:変形労働時間制だからといっても、長時時間労働にならないよう従業員の健康に留意する必要があります。

 

これらの注意点について、専門家によく相談し、適切な労働契約、労働時間の設定や管理が求められます。

 

 

変形労働時間制を導入するには

 

変形労働時間制を導入する必要があると判断した場合、まずは期間や労働時間、また対象者の検討が必要ですが、導入するにあたっては、事前に労使間でよく協議し下記の事項が必要となります。

 

  • 労使協定の締結、または就業規則への規定(または両方)
  • 管轄の労働基準監督署へ届出を提出
  • 適切な労働契約

 

業務量に合わせて働きやすい職場を作るためには必要不可欠な変形労働時間制ですが、注意点や法令にも注意して導入しましょう。

 

 

なお、変形労働時間制については、最近の裁判例にもあったように以下の注意も必要です

変形労働時間制には、就業規則に全てのシフトパターンの記載が必須です

 

 

 

当事務所では、中小企業様やクリニック・動物病院様に向けた従業員の雇用や人事労務に関するご相談など、女性社労士がご相談承ります。その他、中小企業様、クリニック・動物病院様のニーズに合わせた研修なども実施しております。お気軽にお問い合わせください。

 

中小企業様向け人事労務サービスはこちら>>>

クリニック・動物病院様向け人事労務サービスはこちら>>>

 

関連記事

お気軽にお問い合せください

特典として簡単労務環境診断付き