変形労働時間制には、就業規則に全てのシフトパターンの記載が必須です
東大阪で大阪・奈良・京都・兵庫の中小企業様およびクリニック・動物病院様向けにサービスを提供しています、女性社労士の二上です。
本日は、名古屋地裁で昨年判決があった「日本マクドナルド事件」の事例を用いて、変形労働時間制の注意点をご紹介します。
変形労働時間制とは
変形労働時間制は、労働時間を1日単位ではなく、週・月・年単位で調整します。つまり繁忙期等により勤務時間が増加しても時間外労働としないことができます。例えば、月末・月初が忙しく労働時間が増える場合、それ以外の労働時間を減らし1か月単位での労働時間を調整することで、時間外労働として扱わないため、残業手当が発生しません。
中小企業様や多くのクリニック・動物病院様がすでに導入している制度ですが、変形労働時間制を採用した場合、正しい運用をしなければ、思わぬ時間外割増賃金を支払わなくてはならないこともあるかもしれません。
変形労働時間制をめぐる事例
変形労働制をめぐっては、近年、運用が適切にされていないことでの問題・訴訟となるケースが増えています。最近では、日本マクドナルドの1か月単位変形労働時間制が適切に運用されていなかったことにより、「無効」とされる判決もありました。
変形労働時間制は「無効」 マクドナルド訴訟、名古屋地裁判決 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
変形労働時間制を実施するためには、就業規則(もしくは労使協定)に対象の期間における労働日と労働日ごとの労働時間を明記する必要があります。今回のマクドナルドの事例では、就業規則に全てのシフトパターンが記載されておらず、原則のシフトのみを定め、現場判断で独自の勤務シフトを作成・運用していたことが不適法であると判断されました。
この事例により、あらかじめ規定した勤務時間・シフト以外で運用した場合、変形労働時間制は「無効」とされ、通常の1日8時間、週40時間を超過したものに関しては時間外労働としてその手当を支払うこととなります。
変形労働時間制の運用
変形労働時間制を導入される中小企業様やクリニック・動物病院様の多くは、勤務時間を柔軟に変更させ、時間外労働を減らしたいと考えていらっしゃると思います。しかし、現実は勤務時間・シフトパターンを事前に明確にし、その範囲内で運用する必要があるので、シフトの変更は原則認められません。もし、シフト変更の可能性がある場合は、全てのシフトパターンを就業規則や労使協定に記載し、その範囲内で運用するようにしましょう。
なお、変形労働時間制を導入するにあたって、事前に
- 労使間協定の締結、または就業規則の規定、
- 管轄の労働基準監督署へ届出を提出、
が必要となります。
詳しくは、以下の厚生労働省の資料をご参考ください。
000597825.pdf (mhlw.go.jp)(1か月単位の変形労働時間制)
001021908.pdf (mhlw.go.jp)(1年単位の変形労働時間制)
当事務所でも、変形労働時間制に関するアドバイスやサポートを行っています。その他、従業員の雇用に関する人事労務に関するご相談など、女性社労士がご相談承ります。お気軽にお問い合わせください。
中小企業様向け人事労務サービスはこちら>>>
クリニック・動物病院様向け人事労務サービスはこちら>>>