【クイズに挑戦】中小企業やクリニック・動物病院でのセクハラ対策
東大阪市で大阪・奈良・京都・兵庫の中小企業様およびクリニック・動物病院様向けにサービスを提供しています、女性社労士の二上です。
2022年4月から中小企業でも「ハラスメント防止対策」が義務化されたことは、以前のお役立ち情報でもお伝えしました。中小企業様やクリニック・動物病院様で対策を実施されていることと思います。しかし、現実にはセクシャルハラスメントに関するニュースは尽きません。
昨今のニュースを見ても分かる通り、セクシャルハラスメントの多くは周りが呆れていても、セクハラをした本人が気づいていないことがほとんどです。また、本人がそのつもりはなくても受け取る側がセクハラと感じることも多々あります。そう考えるとどの職場にもセクハラのリスクは転がっていると言えます。
本日は、中小企業様やクリニック・動物病院様にセクシャルハラスメント(セクハラ)について、改めて知っていただくことで職場でのセクシャルハラスメントの対策に役立てていただければと思います。
目次
「職場のセクシャルハラスメント」はオフィス内・院内だけではありません
厚生労働省は、職場のセクシュアルハラスメント(セクハラ)を以下のように定義しています。
引用元:あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト|厚生労働省
この場合の「職場」というのは、日々働かれている中小企業様のオフィスやクリニック・医院内だけではなく、仕事での外出中や出張中、そして新年会や忘年会なども職務の延長と考えられるため、「職場」に該当することになります(ハラスメントの類型と種類)。
「セクシャルハラスメント」の対価型と環境型とは
セクシャルハラスメントは、触る・触られるといった直接的なことだけではありません。セクシャルハラスメントの現場で起こる一連の事象もセクシャルハラスメントに含まれ、厚生労働省では、「対価型セクシャルハラスメント」と「環境型セクシャルハラスメント」の2つを定義しています。下記に挙げるように、性的な話を間接的に聞かされる、なども含まれます。
- 対価型セクシャルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことにより、その労働者が解雇、降格、減給される、労働契約の更新が拒否される、昇進・昇格の対象から除外される、客観的に見て不利益な配置転換をされるなどの不利益を受けることをいいます。
例:
・経営者から腰、胸などを触られ、抵抗したため、通勤に2時間もかかる事業所に配置転換させられた。
・上司の性的な発言に対して苦言を呈したら、その後チームのメンバーから外される
- 環境型セクシャルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなり、労働者の能力発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業する上で見過ごせない程度の支障が生じることをいいます。
例:
・職場の上司が度々体を触ってくるので、また触られるかもしれないと思うと仕事が手に付かず就業意欲が低下している。
・同僚がプライベートな交友関係の性的な内容の話を度々職場でしており、そのことが苦痛に感じられて仕事が手につかない。
新しいタイプのセクシャルハラスメント
上記にあげている2つに加えて、最近では下記のタイプも増えてきています。特に近年、SNSが普及したこともあり、新しい媒体を通してのセクシャルハラスメントも増えてきています。
- 「制裁型セクシャルハラスメント」・・・異性に圧力をかける
- 「妄想型セクシャルハラスメント」・・・相手が自分に好意を抱いていると勘違いして怒る
どこからがセクハラ?セクハラクイズに挑戦
では、いったいどこまでがOKで、どこからがセクシャルハラスメント(セクハラ)になるのでしょうか。
以下に、いくつかのケースをあげていますので、一緒に考えてみましょう。
【クイズ初級編】
①「熱っぽいんじゃない?」と、(従業員・部下・同僚の)おでこ・身体の一部を触る
②結婚した従業員(又は部下・同僚)に、「最近ぽっちゃりして、妊娠でもしたの?」と尋ねる
③胸元の空いた服を着ている従業員に対して、職場にはそぐわないと思い注意の意味も込めて「夜のお店では人気になりそうな服だね」という
④飲み会の場で従業員と打ち解けるため、職場では呼んでいない「ちゃんづけ」で呼ぶ
⑤LINEで「彼氏(彼女)と上手くいっているの?」とプライベートな質問を繰り返す
さて、いかがでしょうか。どのようなNGポイントか、も含めて答えをみていきます。
【初級編の答え】
一般的に、上記①~⑤全てがセクシャルハラスメントに該当する行為であると言えるでしょう。
①のケースでは、たとえ下心がなかったとしても避けるべき行為です(緊急や救急のケースでない限り)。②は妊娠を尋ねることはもちろんですが、容姿についてコメントすることも避けましょう。「妊娠」の他に「生理」、「更年期」、「おばちゃん」など、性的なワードは注意が必要です。③では、服装を注意するのであれば、「その服装は相応しくない」としっかり説明をしましょう。④は、「飲み会の場」と「職場」を切り離し不快に感じるような言動をしている点が適切ではありません。⑤は、Lineに限らずとも相手が求めていないのに、プライベートについて尋ねるのは性的に不快感を与える危険があります。
上記の5つも、「コミュニケーションしたい」「会話を盛り上げたい」という思いで、つい聞いてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、くせでついつい言葉が出てしまう方もいらっしゃるかもしれません。相手が異性であれ同性であれ、注意をしましょう。
【クイズ中級編】
では、続いて中級編です。
①男性従業員にやる気を出させるために「男らしく、しゃっきっとしろよ」と言う
②最近疲れているように見える「○○さん、肌荒れがひどいよね、大丈夫?」と声をかける
③「昨日虫に刺されたんだよ・・」と、ズボンをまくり上げて虫に刺された脚を従業員に見せる
さて、いかがでしょうか。今回は、少し考えてしまうものも多かったかもしれませんね。
【中級編の答え】
これらは「セクシャルハラスメント」になりうるケースなので注意が必要です。
①「男らしく」や「女だから」のような、性差別的な表現そして行動はたとえ誉め言葉だったとしても十分気を付けてください。②のように体調を気づかう行為は問題ありませんが、容姿に関係する表現は不快と感じればセクシャルハラスメントになる可能性があります。③では、相手が求めていないのに肌を突然見せられるのは不快に感じるケースがあります。
中級編で見たようなケースのように、悪気なく性的に不快にさせてしまうことが起こり得るということが分かります。
特に上位ポジションの方は注意が必要
中小企業内やクリニック院内の上位ポジションに行けば行くほど、手本となるべき存在ですので、意識を強く持っていることが大切になります。それはひとつに、経営者様・院長先生といった上位のポジションに対して、従業員は断りづらい・言いづらいということがあります。もうひとつは、今の若い世代は、ジェンダーや多様性を学校で学んでおり、大半が性差別的な言動には違和感を感じやすいと言われていることです。
全社・院内全体でセクシャルハラスメントは防止すべきであり、経営者様・院長先生といったリーダーにあたる方たちは、特に見本となるよう心がけていただきたいと思います。
中小企業・クリニック・動物病院ができるセクハラ対策3つ
さて、ここまで読まれてきた中小企業の経営者様、クリニック・動物病院の院長先生は、「一体どうしたら従業員とコミュニケーションとれるんだ?」とお感じになっているかもしれません。実際、セクハラは受け手がどう感じるかが大きな決め手になるため、日々の言動をどれだけ気を付けていても、相手が性的に不快な思いをしたらセクハラとなってしまいます。
では、どのような対策を中小企業やクリニック・動物病院ですることができるのでしょうか。
上記でもお話した通り、ポイントは「受け手がどう感じるか」です。職場で「受け手」とされるのは全従業員です。その全従業員を対象に、セクシャルハラスメントについて、オープンなコミュニケーションをとれる環境が重要であると考えています。
具体的に言うと、以下の3つが重要なポイントとなります。
- 「セクシャルハラスメント」とはどのようなものかを知る、自分の行動を改めて見直す
本コラムを通してお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、「セクシャルハラスメント」は身近に起こりうることだということです。どういった行為が「セクシャルハラスメント」に該当するのかを改めて知り、それぞれの行動を見直し、日々の行動に意識をすることは大切です。 - それぞれの捉え方のズレを認識する
職場内で研修などの機会を持ち、働く人それぞれの感じ方・捉え方を共有し、認識することが大事です。そして、お互いにどうすればセクハラの無い働きやすい環境を作っていくことがとても大切です。
(例:「肌荒れがひどいけど、大丈夫?」はOKか?など、どんな言動が不快に感じる?) - 言える環境をつくる(オープンな職場環境)
上記の2にも関連してきますが、それぞれ受け取り方・感じ方が違うため、一方が意図せずした行動が相手を不快にさせてしまうことは、どこにでも起こりうると言えます。そのような場面になったときに、不快になった人がその気持ちを伝えられる環境にあることは大変重要になります。上司や先輩にはどうしても言いにくいということを加味した上で、もし不快に感じた際には言える環境づくりをしていくことも大切です。
多くの場合、セクハラを受けた被害者はそれを「ダメ」「嫌だ」とは言ってくれません。セクハラは日々意識をもっていないと、知らず知らずのうちに起こってしまうことがあります。中小企業やクリニック・動物病院でもセクハラは起こりうるものであることを理解し、しっかりと対策をすることをお勧めいたします。
当事務所でも、労務顧問契約先様に対して、「ハラスメント防止研修」を実施しています。セクハラ・マタハラ・パワハラは会社を揺るがす大きなリスクになります。ハラスメントを未然に防ぐための研修です。こちらもぜひご検討ください。
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■参考情報
厚生労働省では、中小企業様やクリニック・動物病院様でのセクシャルハラスメント対策に参考・活用いただける様々な情報を提供しています。その中でも、ぜひ見ていただきたいサイトを以下にあげております。
「セクシュアルハラスメント」の例|動画で学ぶハラスメント|あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト- (mhlw.go.jp)
「妊娠・出産等に関するハラスメント」の例|動画で学ぶハラスメント|あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト- (mhlw.go.jp)
令和5年度版 ハラスメント対策パンフレット|厚生労働省 (mhlw.go.jp)