2022-01-13

会社を守る労働問題対応:前編「どんな労働問題がある?起こる原因TOP3」

他人事ではない!?高まる「労働問題」のリスク

 
労働問題イメージ

 

「労働問題」や「労務トラブル」。
これまで全く従業員とのトラブルを経験してきていない経営者の方にとっては、まだまだ他人事のように思われているかもしれません。

働き方への意識が変わり多様化が進み、インターネットなどで様々な情報が飛び交う時代となった今、中小企業やクリニックのような小規模事業所にとっても、些細なことから労働問題につながるリスクが高まってきています。


厚生労働省が公表した「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、毎年100万件以上の労働に関する相談が相談窓口に寄せられています。
2020年(令和2年)度は、おおよそ130万件にも上っています。
日本の企業数が400万弱(うち99%は中小企業)だと考えると、平均するとのべ4社に1社の割合の労働相談があると考えられますね。

そのうち、「民事上の個別労働紛争」(=労働条件とその他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主の間の紛争)とされる案件は、2020年(令和2年)だけで27万8,778件あったと報告されています。
(※この数には、ハラスメントなど、労働基準法等の違反に関するものは含まれません)

 

(出典:「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」| 厚生労働省)(出典:「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」| 厚生労働省)

 

1年に27万8千もの事業主と労働者の労働紛争や労働問題が起こっている現状、もはや他人事ではありません。「うちはちゃんとお給料は払っているし、不当な解雇などはしていない。」
「労働環境は整えている、違法になるようなことはしていない。」
お思いの経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、近年は働き方改革など、労働に関する様々な法改正が行われています。

また、新型コロナウィルス感染症の拡大による経済状況の悪化やストレスなど、経営者・事業主の方にとっては労働問題が発生するリスクが高くなりつつあります。


どんな労働問題がある?起こる原因TOP3

 

「労働問題」「労働紛争」とは、いったいどのような原因で起こるのでしょうか。

令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、「民事上の個別労働紛争」に関する相談内容の上位に上がっているのが、「いじめ・嫌がらせ」(22.8%)、「自己都合退職」(11.4%)、「解雇」(10.9%)、「労働条件の引き下げ」(9.3%)、そして「退職勧奨」となっています。

これを見ると、労働問題が起こるTOP3要因は、

1) 職場でのいじめや嫌がらせ、

2) 退職・解雇、

3) 労働条件(労働時間・休暇・賃金)

であることが分かります。この3つに関しては、職場で特に注意すべきことになります。

 

(出典:「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」| 厚生労働省)図(出典:「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」| 厚生労働省)

 

 

労働問題 1位 いじめ・嫌がらせ(ハラスメント)

 

厚生労働省の相談件数の結果を見ても、2012年(平成24年)以降ずっと相談の1位となっている案件です。
そして、その数は年々大きく増え続けています。
10年前には4.5千件ほどだったのが、
2019年(令和元年)には約8.7千件と倍に近い相談件数にまで増え続けています。
(2020年(令和2年)には数が減っているように見えますが、これまで含まれていた「ハラスメント」が労働基準法の違反とされ数に含まれなくなったためです。)

 

なぜ、こんなにも相談件数が増えたのでしょうか?いじめる人・嫌がらせをする人が増えたからでしょうか?

 

理由の1つとして言えることは、職場での「いじめ」「嫌がらせ」「ハラスメント」に対しての人々の意識が高まったことがあげられます。近年、インターネットやSNSの普及によって、誰もが自由に情報発信できるようになりました。職場でのいじめ・嫌がらせなどの労働問題など今まで隠れていた実態が浮き彫りにされてきました。このような背景が、人々の意識を高め、相談件数の増加にもつながっていると考えられます。

 

いじめ・嫌がらせ、ハラスメントは、やっている本人が意図せずに引き起こしてしまっているケースが少なくありません。
全く悪気なく言った言葉や行動が、相手にとっては「いじめられている」や「傷つけられた」と感じることもあります。今は考え方も多様です。男女に対する意識、仕事に対する考え方、など過去には「当たり前」で通っていたものが通用しません。まずは、職場の意識を高め、いじめや嫌がらせ、ハラスメントが起こらないように努めることが重要になります。

 

職場でのハラスメント防止は、国を挙げての取り組みの一つです。
2020年6月には「
改正労働施策総合推進法」が施行され、ハラスメントを防止する規定が盛り込まれました。
中小企業は、2022年4月1日までに、職場でのハラスメント防止の対策、対応が必須となります。

 

いじめ・嫌がらせやハラスメントは、経営者の方だけの努力では改善されません。職場の従業員の一人ひとりが意識をし、互いに働きやすい環境を作ることに努めることが重要です。
職場のハラスメントに対する意識を高めるために、ハラスメント対策・方針の周知・啓発、相談できる環境づくりなど、対策を進めることをおすすめします。

●職場でのハラスメント研修の実施については、「社員研修」のコラムもご参照ください。


労働問題 2位 退職・解雇


退職・解雇は従業員にとっても人生の大きな出来事です。そのため、雇用主側が適切な対応をもって行わなければ労務トラブルへと発展してしまいます。

 

退職と解雇の違いは、以下のようになります。
ポイントは、「会社の一方的な意思」によるものか、よらないものかの違いになります。

 

  • 退職:従業員の意思や合意に基づいて労働契約を解約すること
  • 解雇:会社が従業員との間の労働契約を一方的に解約すること

 

「退職」の場合:

従業員が退職願いを出してきたときは、たとえ密かに「辞めてもらいたい」と思っている場合であったとしても、なぜ、辞めたいのか、丁寧な聴き取りを行ってください。もしかしたらいろいろな不満を抱えて辞めたいと思っているのかもしれません。
このようなケースでは、辞めたとたんに労基や弁護士事務所に駆け込む場合があります。予期せぬ労基からの呼び出しや、内容証明が送られてくることもあるでしょう。

それらを防ぐためには、従業員が不満を残さないで退職するかどうかにかかっています。従業員の気持ちに寄り添って話を聴き、気持ちよく次のステップに向かうことができるようにする、これだけでも不満を抱えて辞める従業員の気持ちは随分と変わるはずです。

また、従業員の話から経営者が気が付かなかった、職場のトラブルを見つけることができるかもしれません。同じ部署から続けて辞めるような場合は、その部署でハラスメントが行われている可能性もあります。

従業員から「辞めたい」と言ってきたときには、必ず経営者や上司による面談を行うことがトラブル回避のポイントです。また、退職する場合には、必ず、退職願を書面で提出してもらってください。

 

 

「解雇」の場合:

解雇については、労働者は労働基準法によって守られているため。経営者側の判断で安易に解雇を行うと大きな問題につながります。
たとえ、従業員の勤務態度が悪いなど不適切な行動があったとしても、正しい手順で慎重に行わなければ、雇用主側が損をする結果となってしまいます。

また、長引くコロナ禍で、支援金や雇用調整助成金では経営がもたなくなる事業所が増えてくることが予想されます。会社を潰さないために、いよいよ従業員の整理解雇を行わざるを得ないケースが多くなると思われます。整理解雇を行う場合は手順と要件をしっかりとクリアしなければ「不当解雇」になってしまうため、必ず専門家とともに慎重に進めていかなければなりません。

 

 

労働問題 3位 労働条件


労働条件というと、様々なものが含まれますが、
中でも
①労働時間・休暇、②賃金が、トラブルとなりやすい条件として挙げられます。

労働時間・休暇
長時間の労働・残業、休日・有給休暇については、従業員の肉体的・精神的な疲労、健康面に直接影響するものです。
最近は「仕事よりもプライベートの充実」を重要視する傾向にあります。(四半世紀以上前のバブル期には「24時間働けますか…」などというキャッチコピーまで流行する時代もありましたが今や化石のごとく、です。今ではコンプライアンス違反と訴えられます…)。

事業所・職場には、従業員が健やかに働ける環境が求められています。

長時間労働や十分でない休日・有給休暇は従業員の不満を生みます。そして業務の質も低下させる原因にもなります。逆に言うと、これらがしっかりとしていることで、職場に好影響を与えることも可能です。経営者の方には、労働問題の対策としてだけでなく、改めて労働時間・休暇の重要性を見直していただきたいと思います。

 

「働き方改革」により、労働時間・残業時間の制限や休日・年次有給休暇、そして各種休暇取得については法律が改正されました。

 

賃金
賃金は、従業員の生活にも関わる、極めて重要なものです。よって、賃金に関わる決定・変更については、細心の注意を払って行う必要があります。

経営不振など、会社の一方的な事情での賃金や残業代の未払いは以ての外ですが、「サービス残業」などが起こっていないかも注意が必要です。従業員本人の判断による、「サービス残業」であったとしても、それが横行している場合、「残業隠し」や「過少申告による残業代の不払い」という問題に発展することもあります。


上記に挙げた以外にも、最近ではメンタルヘルス」に関するトラブルも問題になってきています。
ハラスメント(いじめ・嫌がらせ)や労働条件(長時間の労働や業務過多など)など、労働環境が原因になるメンタルヘルスは労災の対象ともなります。

職場におけるメンタルヘルス対策・ストレスチェック実施など、事業所での対応も必須となっています。
ぜひ、経営者の方には上記に挙がっているような「労働問題」が起こりうる環境でないか、対策はされているか、見直しをしてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

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