2022-03-14

前編「雇用前」従業員を雇ったらおさえておきたい人事・労務業務

採用面接イメージ

 

事業を始める経営者の方の中には、今すぐではなくとも、いつかは「従業員を雇いたい」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

いざ「従業員を雇う」と決めたものの、初めて従業員・スタッフの雇用をされる方々の多くは

    • 「従業員を雇うために何が必要か分からない」
    • 「何から手をつけていいのか分からない」
    • 「思っていた以上にすることが多い」など、初めてのことで戸惑われます。

従業員・スタッフを雇用する上で大切なことは、適切な従業員を採用し、従業員が健やかに気持ちよく働ける、また成長ができる職場を整えることです。
それらを実現させる業務が、「人事」・「労務」といった業務になります。

人事
従業員・スタッフの採用や、採用後の研修・能力開発・キャリアアップなどに関わる業務

労務
従業員・スタッフの労働時間の管理、給与支払いや社会保険の手続きなど職場で働く労働者の管理に関わる事務業務

上記の通り、「人事」「労務」の業務は、従業員・スタッフを雇われる経営者の方にとっては重要な業務です。これらをしっかりと行うことで、従業員にとっても、職場・事業にとってもメリットとなります。

この重要な人事・労務に関わる業務、大企業であれば人事部や総務部などの専門部門に任せておけるのですが、小規模の事業所ではなかなかそのようにはいきません。

小規模な事業所やクリニックや動物病院の場合、任せられる担当者もなく、経営者や経営者の身内の方が全てを担われていることも少なくはありません。

そのような小規模の事業所の経営者の方ために、おさえておいていただきたい「従業員の採用から退職までの基本となる人事・労務業務」を以下にご紹介します。
社労士クレイン
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人材を見つける(求人を出す)


従業員・スタッフを採用するには、求人募集をする必要があります。
「求人募集を出すぐらい簡単な事…」と思われる方もいますが、実際求人を出してみると想像していたほど簡単なことではないと気づくことも多いようです。

中小企業やクリニックの経営者の方からよく聞くお悩みの多くは、

  • 求人を出したが、応募者が来ない…
  • 応募者は来たが、求めている人材ではなかった…

など、なかなか思うように適切な人材が見つからないことのようです。

特に中小企業の事業所やクリニックの場合、「見つけてもらえる求人」であることと、「求めている人材に魅力が伝わる求人」であることが重要となります。

では、中小企業やクリニックのような小規模の職場の求人の場合どのようなものが効果的でしょうか。

 

中小企業やクリニックにおすすめの求人方法は?

人材募集方法としては求人紙媒体によるもの、WEB媒体によるもの、自社のHPに掲載する、SNSによる発信、人材派遣の活用、知人などからの紹介など様々ありますが、ここでは「ハローワーク」による求人について取り上げたいと思います。

ここ数年、インターネットやSNSの普及もあり、インターネットの求人サイトやSNSを利用した求人方法が増えてきています。このようなご時世、「ハローワークの利用者は年齢層が高い…」といったイメージをお持ちの方もいるようですが、実際は20-30代の間でも積極的に利用されています。
転職サイト比較サイト(転職サイト比較Plus)が実施した、22歳~39歳の転職者を対象としたアンケートでは、「ハローワーク」が、転職活動を進める際に利用した求人媒体として第一位に上がっています。

参考:2020年1月転職サービスの利用に関するアンケート || 転職サイト比較Plus |

最近はハローワークもオンラインサービスを充実させています。

求人者がオンラインで求人情報を掲載し、求職者がオンラインで求人情報を検索・閲覧できるだけではなく、

  • ハローワークからオンライン上で直接求職者におすすめの求人紹介
  • オンラインで応募者の応募書類・志望動機などが確認できる
  • 面応募者と面接日の調整など、直接メッセージを送れる
  • 求職者が求人者にオンラインで直接応募できる「オンライン自主応募」

など、有料の求人サイトとほぼ同様のサービスを提供しているのです。

その他にも、ハローワークでの求人で対象となる助成金や補助金が受けられる可能性があります。

(最新の助成金については、厚生労働省HPでご確認ください)

 

選ばれる求人になるためのポイントは?

では、何千とある求人情報の中から選ばれる求人募集になるためには何が重要でしょうか。やはり、「どんな仕事をするのか?」ではないでしょうか。もちろん、お給料や福利厚生なども選ぶ要素にもなりますが、「仕事内容」が求職者にとって「やってみたい」と思えるかが重要となります。


ハローワークでの求人情報を出す場合、「仕事内容」の項目にどのように記載するかがとても重要となります。「仕事内容」は、求人票の中で必ず目を通す内容であり、そして最も差別化ができる箇所と言ってもいいでしょう。

仕事の内容を書くときは、

  • 誰でもなじみのある職種であったとしても、「営業職」のような一言ではなく、どのような仕事かを応募者がイメージできるように具体的に書きましょう。
  • 専門用語などは避け、誰にでも分かる言葉で書くことも大切です。
  • 未経験者でも可能、必要となるスキル、など注目してもらいたい言葉はこの「仕事内容」に含むと良いでしょう。(別に必要なスキル・経験を記載する項目もありますが、応募者に見ておいてもらいたい内容はここに含むことをおすすめします)

その他にも、事業所・求人のPRとして「事業所からのメッセージ」を記載できる項目もあり、職場の風土・雰囲気、働きやすさなど職場の魅力を伝えることができます。
ワークライフバランスを重要視する若い世代にとっては、有給休暇がどのくらい取れるかや残業があるかないか、ということも、決め手になるポイントになるので、そのあたりを強調するのも良いかもしれません。
ただし、実情とかけ離れたことをアピールするのは避けなければなりません。

また、研修が充実している、未経験から頑張れる環境、子育ての中の方でも働きやすい、など「この職場で働きたい」と思わせるような良さアピールをすることで、より職場に合った人に「選ばれる求人」にすることが可能です。(写真などをアップして職場の雰囲気をアピールすることもできますよ。)

求人を出したけど応募者が集まらない、効果的な求人情報の書き方や事業所・職場のアピールをどのように掲載すれば良いか分からない、などお悩みの方はご相談ください。
それぞれの職場・仕事内容に合った効果的な方法をご提案いたします。
社労士クレイン
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適切な従業員を選ぶ(選考・採用する)


求人を出し、応募者が来たら、次に重要なことは、応募者が適切な人材かを見極め採用に進めることです。

知っていますか?採用・選考のルール

採用・選考については、差別(年齢、性別、障碍者など)のない、公正な選考であることが厚生労働省によって求められています。面接で家族のことを尋ねることは、たとえ気軽な質問だったとしても、「就職差別」ととられることもありますので注意しましょう。

詳しくは、以下の厚生労働省のサイトをご参照ください。

 

採用する従業員の適正の見極め、どうしたらいい?

適切な人材を選考し、採用することが大切ですが、実際に応募者を見極めできる機会としては、履歴書の情報と面接の限られた時間内での対話だけです。この限られた機会だけで、その応募者の適性を判断することはなかなか難しいのが現実です。
実際、面接では感じがよく仕事もできると思って期待して採用したのに、よかったのは面接時だけ、仕事はできない、態度は悪いと経営者が嘆かれるケースを何度も見てきています。
もし仮に、採用した従業員・スタッフが職場や職務に合っていなかった場合でも、簡単に解雇することもできません。(※解雇は、
労働契約法により「合理的な理由があり、社会通念上相当」でない限りは違法とされます)

人手不足だから、条件さえ合えばだれでもOKという採用の仕方では、のちのちのトラブルをいくつも抱え込むことになりかねないのです。面接だけでは本当に適切な人材かどうかわからないのですが、少しでもいい人材を雇用するためには、たとえパートやアルバイトの採用であったとしても、事業所側は少なくとも3人以上で面接に臨み、30分から1時間程度は時間をかけてほしいところです。

また、正社員募集であれば、面接だけではなく、簡単な筆記試験(職種に関係ある事項や一般教養など)や適性検査を取り入れてみる、などより丁寧な選考をお勧めします。

それでも、採用した従業員・スタッフの適性を時間をかけて見極めたいと思われる場合は、試用期間を設けたり、またはパートやアルバイトなら始めは有期雇用契約で雇い、ずっと働いてもらいたいと思ったらその後無期契約にしたり、正社員登用したりすることもできます。

「試用期間」と「有期雇用契約」はそれぞれどのようものなのでしょうか?

「試用期間を設ける」

会社が社員を雇用するときに、一定の期間を設けて、社員の能力や適性を図るための期間をいいます。
「正社員」(無期雇用)を前提としている為、正社員募集となり、応募者・従業員としては会社・職場に対しての安定感を感じるでしょう。試用期間については就業規則や雇用契約書でその運用の仕方を明確に定めておかないと、トラブルの原因になります。

特に試用期間の終了後に「本採用拒否」するには、正社員の解雇と同様に「合理的な理由があり、社会通念上相当」でない限りは違法とされることが多いので、拒否の理由を明確にしておくことが大切です。

 

「有期雇用契約とする」
期間を区切って採用する雇用形態です。
始めは3か月から6か月ぐらいの一定期間を「有期雇用契約」として雇い、その後、お互いの合意があれば契約の更新をしたり、無期雇用にしたり、正社員登用することもできます。これらの場合もきちんと就業規則に規定しておきましょう。

 

有期雇用契約の場合、もしもその従業員が会社や仕事に合わないなどと判断した場合、契約期間中の解雇はできませんが、契約が終了した時点で期間満了として雇用を終了することができます。

ただし、何回も契約を更新したり、長い間有期契約が続いている場合は、期間満了でもすぐに辞めさせることができない裁判事例が多くありますので、次の更新をどうするかは早め早めに労使で話し合っておき、トラブルが起こらないようにしておきましょう。

一見、「有期雇用契約」で採用する方が、会社側のリスク軽減には良いようですが、求人募集をする際に「有期雇用」での募集よりは、「正社員」の方が応募者にとっては魅力的であり、良い人材が集まりやすい傾向もあります。

ぞれぞれの会社・職場のニーズに合わせてどのような採用をするかを検討することをおすすめいたします。
社労士クレイン
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当事務所では、大阪に拠点をおき、関西圏を中心に中小企業の経営者、クリニックや動物病院の院長様、スタートアップやベンチャーの支援を行っております。
従業員の採用から退職に関するご相談以外にも、社会保険・労働保険に関する手続きのサポート、研修実施や助成金についてのご相談など、リーズナブルな価格で対応しております。

お客様の目線になり親身になること、そして経営者と従業員のみなさまがともに成長できることをモットーにアドバイスさせていただいております。

 

 

 

 

 

 

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